いろはにほへと
「少しは解放感、ある?」
頼んだ物が運ばれてくるまでの間。
桂馬がマスクを外して、訊ねるので、私は頷く。
「髪を切った時には、負けますけど。」
そう言って、少し笑うと、桂馬が驚いた顔をした。
「ーどうか、、しましたか?」
何かまずいことでも言ってしまっただろうかと、今の自分の発言を反芻してみるが、思い当たらない。
「…いや…」
ボソボソと呟く桂馬の声が聞き取れなくて、益々私は首を傾げる。
「…桂馬くん、もしかして具合悪いですか?寒い中立ってたから…顔が赤いような…」
言いながら、額に触れようと手を伸ばすが、桂馬は身を引いた。
「違うから。」
「すいません…」
嫌だっただろうかと、私は肩を落としてしゅんとなる。
「あーだから、違うんだって。」
慌てて言ってくる桂馬を見ると、困ったように頭を抱えながらこちらを見ている彼と目が合う。