いろはにほへと
「そろそろあったまった?」
桂馬の声にハッとして、空になったカップに気付く。
一度は赤面しあって、少しの間顔を合わせる事すらできなかったけれど、直ぐに桂馬がいつもみたいに茶化してくれて、緊張が緩んだ。
桂馬の仕事の話を少し聞いて、私が澤田の話をして、両親の心配性な所を教えて、桂馬の家族について訊ねたりして時間が過ぎて行き、今は桂馬がトイレに立った所で、私がぼんやりしていたと。
一瞬、考えていた内容とリンクしていて、やはり桂馬には私の頭はスケルトンに見えているのかと驚いたが、直ぐに身体の事だと思い直した。
「はい、大分ポカポカしています。」
更に言わせて貰えば、店内も非常に暖かくて睡魔が襲ってきそうな位だ。
「ん。じゃ、出ようか。送ってく。」
「はい、ありがとうございます。」
桂馬が仕事というのは、やはり本当で、この後ドラマの撮影らしい。
桂馬がマスクをしたのを確認してから、個室を出る。
そこにー。
「ハル!こっちこっち!」