いろはにほへと
店の入り口からやってきた彼等と、俯いたままの私は引っ張られるような形ですれ違う。
「え…ひなのちゃん!?」
気付いた孝祐が、驚き、私の名を呼んで、反射的に顔を上げれば、目が合った。
最初は、手前にいる孝祐と。
次に奥にいた、トモハルと。
そういえば、ばっさり髪を切った後、二人とは会っていなかった。
こんなに、はっきりと周囲が見える状態で、外で会う事なんて、なかった。
「?…ひな?」
引っ張る力に抗って、立ち止まると、桂馬も止まり、振り返る。
「気にするな、いこう」
手首を掴む力が、少し強くなるけれど、私が動かずに、二人ーいや、トモハルを真っ直ぐ見つめた。
トモハルも、髪を切ったらしく、長めだった髪が、耳にかかる程度になっている。
私よりずっと大人なのに、子供っぽい目が、微かに揺れた。
折角最近落ち着いてきているのに。
こんな所で、接点を作ってはいけない。
わかってる。
だから。