いろはにほへと

直ぐにメンバーを集めてのミーティングが行われる。

場所はいつも練習してたスタジオ。

孝祐に電話をしてから数時間後。

ソファがあるミーティングルームで、俺らは顔を合わせていた。



「声が出たのは、俺らとしても本当に有難いケド…」

口火を切ったのは、政宗。

「無理は、しなくていいよ。」

その後を継ぐように、宗司が言った。

俺が声を失い、活動再開の目処が付かず、存続が危ぶまれても、ルーチェのメンバーは誰も抜けるとは言わなかった。


「つーか、社長に声が出た事が知れたら、すーげぇこき使いそう。」

孝祐が苦々しげに吐き出す。

ルーチェが活動休止になってからの、社長の怒りモードは非道く、扱いも雑だった。
確かに迷惑は掛けたから、仕方ないといえば、仕方ないのかもしれない。


「遥、歌えるの…?」


政宗が伏せていた目を上げて、俺を見た。


「まだ…トレーニングもしてなかったから、、、直ぐには無理かも。でも、このままいけば…」


「そうじゃナイ。歌いたいかって訊いてるんだよ?仕事としてとか、そんな義務感じゃなくってさ。」


予想していなかった質問に、目を瞬かせ、周りを見ると、宗司も孝祐も俺を見ていた。


「 欲しいものが手に入らない世界で、これからもやっていくつもり?」


宗司が言う。







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