いろはにほへと
「何が…言いたいんだよ。」
長いこと失っていた所為で、自分の声はこんなものだったかと、声を出すとはこういうことだったろうかと戸惑いながらも、メンバーが言わんとしていることを掴みたい一心で訊ねる。
「お前の中に、その選択肢は、あったはずだ。気付かないとでも思ったか?…俺らに遠慮することない。俺らは付いてくよ。」
孝祐のその言葉に、他の二人も頷いた。
まさか、と思った。
「何言ってんだ、そんな…」
確かに何度か考えてはいた。
だが、不可能な話だと隅に追いやっていた。
「お前達、それがどういうことか分かってて言ってるのか…?」
声の出の悪さなんて吹っ飛んでしまって、俺は信じられない気持ちで、周りを見回す。
「遥が声出せなくなってる間、俺等はちゃんと話し合ってたからね。」
「てか、意味が分かんないほどコドモじゃナイし。」
宗司と政宗がドヤ顔で立ち上がる。
「けど、やる事はガキみたいだけどな。」
孝祐が笑った。
「ガキだけど、オトナのケンカだ。」