いろはにほへと
素直に唄を歌えなくなってどのくらいだったんだろう。
素直に想いを声に出せずに、どれくらいたったのだろう。
きっともう何度も繰り返して、今いる俺は、俺じゃなくなってる。
それが大人って言うもんだって、言い聞かせて、ここまで来たけど。
頂点まで上り詰めた景色は、思ったほど綺麗じゃないし、広くもなかった。
「ー戻りたいんだ。」
それが、できないと分かっていても。
過ぎた時間は戻らないんだと知っていても。
せめて、今。
この瞬間の気持ちに嘘を吐いてまで、歌うことはしたくない。
もう、物分かりの良い大人は辞めだ。
「…わかった。お前達がそこまで言うんだったら、本気なんだって信じる。俺もー」
そこで言葉を切ったまこちゃんは、内側から溢れそうな感情をなんとか食い止めようとするように、唇を噛む。
そして、充血した目で。
「ー俺も、見てみたい。そんなルーチェを。」
そう、言った。
湯気の立たない珈琲は、不味くて、苦くて。
けれど、一滴も残さずに、全員飲み干した。
それが、何かの誓いの儀式みたいだと、誰かが言って笑った。
素直に想いを声に出せずに、どれくらいたったのだろう。
きっともう何度も繰り返して、今いる俺は、俺じゃなくなってる。
それが大人って言うもんだって、言い聞かせて、ここまで来たけど。
頂点まで上り詰めた景色は、思ったほど綺麗じゃないし、広くもなかった。
「ー戻りたいんだ。」
それが、できないと分かっていても。
過ぎた時間は戻らないんだと知っていても。
せめて、今。
この瞬間の気持ちに嘘を吐いてまで、歌うことはしたくない。
もう、物分かりの良い大人は辞めだ。
「…わかった。お前達がそこまで言うんだったら、本気なんだって信じる。俺もー」
そこで言葉を切ったまこちゃんは、内側から溢れそうな感情をなんとか食い止めようとするように、唇を噛む。
そして、充血した目で。
「ー俺も、見てみたい。そんなルーチェを。」
そう、言った。
湯気の立たない珈琲は、不味くて、苦くて。
けれど、一滴も残さずに、全員飲み干した。
それが、何かの誓いの儀式みたいだと、誰かが言って笑った。