いろはにほへと
「ルーチェの唄は、もうずっと前から病んでました。」
そう言ったのは、まこちゃんだった。
まこちゃんは、ルーチェの売り出しの時からの付き合いで。
順調な時も、苦しい時も、一緒に乗り越えてきた。
でも、俺がドラマの主題歌を断って逃げた時、まこちゃんは心ないことを俺に言った。
それはビジネス上は正しい意見だったと今は思う。
だけど、俺がそれで、すごく嫌な思いをした事を伝えたら、後で謝ってくれた。
俺の持つ、音楽への姿勢を、信頼してくれた。融通を効かせてくれた。
だから、次のPVでごねた時、理解してくれようとした。
ひなのと、ひなのの両親を説得するのに、尽力してくれた。
まこちゃんが、居なければ、ルーチェはルーチェじゃない。
マネージャーとして、まこちゃんは必要不可欠な存在だった。
「そして、それは、俺の責任でもあると感じています。ルーチェを社会に売る為に、本来大切にするべき、ルーチェの世界観を、潰してしまっていた。」
まこちゃんに続いて、孝祐が口を開く。
「ールーチェは、遥の世界観で、成り立っているんです。」
「社長は、遥の声が駄目になった時、俺達に別のボーカルを当てがおうとしましたよね。解散させようと考えたこともあったようですし。」
宗司が後を継ぐ。
「それはっ…お前達を思って…!」
僅かに焦った様子を見せた社長に。
「俺タチ、金の為に曲作ってんじゃないんダヨネ。金がなくても唄は歌えるケド、遥の世界がツブれたら、ルーチェの唄は滅びちゃうんダ。」
政宗が、誰よりもリラックスした様子で、付け足した。