いろはにほへと
もう二度としなくていい
合格発表の日は、今にも降り出しそうな雪空で、春の気配を微塵にも感じさせなかった。
「……ありました……!」
ベッドの上、布団を頭からすっぽり被った状態で私は呟く。
ネットの画面で確認することが怖くて、かといってその責任を誰かにお願いすることも出来ずーその理由の一つとして家にはインターネット環境が整っていないどころか、コンピューターなるものが存在しない事が挙げられるー、ひとり、部屋で桂馬からもらったスマホを握り締めた状態で、発表の時間から5時間過ぎ漸く腹を括った瞬間に溢れた一言だ。
「…う…よかっ…た…」
込み上げてくる涙と、安心からくる脱力。
「ひー…ん」
声をあげて泣き、暫くしてから布団から這い出て、ドアを開けたら父と母が聞き耳を立てていた。
「ひなのっ」
「おと…さっ、おかーさっ」
私を心配そうに窺う二人に、泣きながらVサインをして見せる。
「う、う、受かりましたぁ~~~~~!」
「きゃー!やったぁ!!!」
落ち着いたはずの涙は、まだ転がり始め、母が私を抱きしめる。
「頑張りましたね、ひなのさん。」
その様子を、一歩離れた所で見つめる父が、優しく褒めた。