いろはにほへと
廊下で開けるのは、なんとなく気が引けて、部屋にまた戻った。
ベッドに腰掛けて、トモハルの字を何度も確認する。
そして、自分の名前を、トモハルが書いたという事が、気恥ずかしかった。
ビリ、と破く事なんて、考えにすら及ばず、ペン立てからハサミを手にする。
切手の押印は今日ではなく、父が合格発表まで待っていてくれたのだと気付く。
ーお父さんは、、トモハルを慮ってほしいと、あの時から思っていたんですね。
その事実を、時間を置いてから、知った今。
父は、きっと、私とは違う解釈をしたのだろうと考えられる。
一区切りついた今なら、一歩下がった所からもう一度事実を見直す余裕もあるのではないか、父はそう思ったに違いない。
自分としては、それはもっと後の事、それこそ10年後とか、その位未来のことだと考えていたのだけれど。
それでも、トモハルが、私に何かを伝えようとして、こうして、手紙を届けてくれた。
だとすれば、向き合うのは、やはり父の言うように、今なのかもしれない。
それが、また、傷つく結果になるとしても。