いろはにほへと
「ありがとう…ございます…」
言うべきか、言わないべきか。
トモハルから送られてきたチケット。
そのせいで歯切れの悪い、受け答えになってしまっている自覚がある。
元々、歯切れの良い会話なんて、できてないけれど。
《嬉しくないの?》
「!?いえっ!?そんなことは!嬉しいですよ。すごく嬉しいです。安心しました。」
そして、電話の向こうの彼は、そういうのに、とても敏感な方なのだ。
《お祝いしないとな》
「はいっ、今晩は、父と母がお祝いしてくれるそうです。あ、もし良かったら桂馬くんもいらっしゃいませんか!?」
《………》
突然、無言になってしまった桂馬に、私がハッとした時既に遅し。
「あ、あー、えっと、い、忙しいですよね?そんなのね?!困りますよね?すいません、忘れてました…」
焦ってるからって、何を言ってるんだ、私は、と自分の頭をスマホを持たない左手でボカボカ叩いた。
「あ、えと、では、また後日にでも!私も桂馬くんのお祝いしたいと思います!」
《ーいく》
「ーーーーーーーへっ!?」
低く静かに返事をした桂馬に、私は素っ頓狂な声を上げてしまう。
「い、今、なんて言いました?」
《いく。》
「でもでも、時間、ないですよね???」
《…最初からは無理だと思うけど、絶対行くから。》
「は、いや、でも、あの…」
《いくから》