いろはにほへと
《……おめでとう、中条さん。ちょっと、最初の電話口のやりとりが欲しかったけど。》
澤田が、呆れたような口調で、そう言うので、すみません、と謝った。
《まぁ、受かるだろうと思ってたけどね。中条さん、頭良いから。》
「いやいや、そんなそんな…でもホッとしました。」
《本来ならねぇ、こっちから訊きづらいんだから、中条さんからの連絡待つべきなんだけど、遅いからかけちゃった。》
「すみません…」
《ちゃんと桂馬くんには連絡入れてあげなよ》
「ちょっと遅かったみたいです…」
《………ったく…》
久々の澤田節が懐かしく、また涙腺が緩む。
「っ澤田さん…」
《え、何、泣いてるの?そんなに嬉しかったの???」
そのせいで、澤田がぎょっとした声を上げた。
「ちがうんです…」
どうして良いかわからず、苦しんでいる自分を、たまに第三者の視点で見ているように、見ることがある。
どこかしら、自分のことではないような感じがして。
だけど、この胸は、痛む。