いろはにほへと
フルーツと、チェリーケーキ、更に桂馬からもらったスフレチーズケーキを食べる際使用したデザートフォークを洗い、澤田に差し出しながら。
「…私の、思う通り、する、という事が、わからないんです…」
私はぽつぽつと胸の内をこぼす。
「どうしたいのか、わからないんです。」
半ば項垂れるように俯く私に、澤田が首を振った。
「そんなことない。もう、中条さんの中で、答えは出てる。でもそれは、誰かを傷つけることになるかもしれない。だから、中条さんは二の足を踏んでいるんでしょ?」
「……」
澤田の言う通りなのかもしれない。
私は良い子でいたい上に誰かを失いたくないのだ。
誰も手放したくないのだ。
「でも、それがーその優しさがーかえって傷を深くしている事もあるんだよ。」
ハッと顔を上げた私を、澤田は真っ直ぐ見た。