いろはにほへと
胸の痛みは恐らくストレスだ。


心臓に負荷がかけられて、トモハルというストレス源に関わると痛み出す。




トモハルさえいなくなれば、きっと痛みもなくなることだろう。




8月30日になれば、夏休みを一日残して、私は屋敷を後にする。



藤の冬の手入れだけを、青柳さんのご主人にお願いして、あとはまた来夏。





そしたら、日常生活が戻ってくる。



ストレスフリーだ。



トモハルからも解放される。




トモハルがこの先どうするのかは知らないけれど、自分でどうにかするだろう。




私には関係ないし、トモハルのことだから、なんだかんだやっていくんじゃないかと思う。






「ひなの、おんぶしようか??」





「結構です。」




「……いなごは嫌なんですけど…」




「良質なタンパク質です。」




「………」






背景に連なる山々を見ながら、清々しい気持ちで、トモハルの扱い方にも慣れてきたなぁと感慨深く思った。



雲の隙間から見えるオレンジの夕陽が、二人の道を穏やかに、照らす。

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