いろはにほへと


言うべきじゃ、なかったのかもしれない。




こういう時、泣くのは、卑怯だ。
相手の辛い顔を見ないようにしているのも、失礼だ。



頭では理解しているのに、それが出来ない自分は、なんてひどい人間なんだろう。



けれど。

一度、名前を口にしてしまったら、想いが溢れ出てきてしまうように流れていく。



「忘れることなんて…出来ない…」



恋心は。
こんなに苦しいのに。
どうして死なないんだろう。
こんなに辛いのに。
どうして楽になろうとしないんだろう。

この心は、どうしてトモハルへの気持ちを捨てたがらないんだろう。

どうして、あの人で頭がいっぱいになった時。
それだけで。
心が震えて、満たされて、嬉しいと感じてしまうんだろう。


まるで、そうなることを、望んでいたみたいに。

それだけが、私の全てだとでもいうように。

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