いろはにほへと
「ー俺じゃ、ダメなの?行くななんて言わない。ハルんトコに行ったって良い。俺んトコに帰ってきてくれれば、それでいい。」
矢継ぎ早にぶつけられる言葉ひとつひとつが、桂馬の熱を帯びていて、苦しくなる。
「ひなが傷付いてもいいって覚悟して行くならそれで良い。だからーーー」
桂馬の腕の中で、私は首を振り、桂馬の胸を押し返す。
「このひとつを、、、最初で、最後に…します…」
「ーえ?」
どこまでも優し過ぎるこの人を、これ以上傷付けることは出来ないし、受け入れてあげることも、自分には出来ない。
もっと早く、分かっていたら良かった。
自分がビギナー過ぎて、分からなかった、で済まされることではない。
人の気持ちを、踏み躙ることになってしまった。
重さは分からないけど、でも桂馬も、私がトモハルに向けるような、そんな想いを、私に向けてくれているのだとしたら、今から言う事が、どれ程残酷な事なのかが、理解できる。
「これから、、、どうなっても、恋は…もう二度としなくていいと、そう、思ったんです。だから、、、」
トモハルが教えてくれた恋。
自分の中の、最初で最後の恋にしよう。
この先何十年経っても、きっと忘れる事なんてできない。
そう思うから。
だから、これ以上の恋は、もう二度としなくていい。
これ以上に、誰かを好きになる事なんて、きっと、いや絶対にない。
だから。
だからー
「桂馬…く…ん…ご、、ごめん…なさい…」