いろはにほへと
世界が終わるとしたら
寒い、夜だった。
けどそれは、別に外気が冷たいから、だけじゃなくて。
今。
たった今さっき。
言われた、好きな人からのごめんなさいが、余りに、痛過ぎて仕方ないからだ。
分かってた。
向こうが本気で動こうとしたら。
二人がお互い素直になってしまったら。
俺が、間に入る余地はないって。
「傷付けて、良かったんだ…」
寒空に吐く、呟きが、儚い。
どんなに傷付いたって良かった。
傍にいられれば良かった。
嫉妬に駆られても、全てが俺のものにならなくても。
誰よりも近くに居られたら、それで。
最初あった自信は、どんどん萎んでいって、今じゃ見る影もない。
焦って仕方ないのに、それを見せないようにして。
必死だった。
「訊かなきゃ良かったのかな。」
何があったのって。
そうしたら、まだ、彼女を待っていられただろうか。
気付かなかったフリをして、優しい彼女が、自分に言い出せないのを良い事に。