いろはにほへと
かの有名なロックバンドが、初めてコンサートで使用したという(澤田情報)この大きな建物は、遠くから見るだけでも圧巻なのに、近づくと息が詰まりそうなほど、迫力があった。
メディアの露出が元々少ないルーチェが、報道陣に胸中を語ったのはあのゲリラライブをした1日のみ。
本格的な活動は、今日この場所から始まるコンサートツアーから、ということもあり、電車から駅から、人の数が尋常ではなかった。危うく、出口を見失う所だった。
一旦外に出てしまえば、人という人がそこへ流れて行くので(しかもルーチェの内輪を持っていたり、やシャツを着ている)その波に乗って行けば、直ぐにこうして目的地へやって来ることができた。
夏だから、外はまだ明るく、隅々まで見渡せるが、ここまで人が多いと、心細くなってくる。
「アリーナ、、席…は、ええと…」
澤田が、幾度となく入り方を教えてくれたおかげで、頼りない足取りではあるが、恐らく正しく向かって行けてると思う。
会場は17時。少し過ぎた今、人がどんどんと建物の中に吸い込まれていく。
ルーチェ始動の瞬間に立ち会おうと、マスコミも多い。
ーこんな中、私が来る意味が、あるのでしょうか。
生まれて初めての行列に並び、キラキラ人間達に囲まれて。
地味な出で立ちの私は、絶対に浮いている。
ルーチェのファンにも見えない。
早くも、逃げ出したい衝動に駆られる。