いろはにほへと

ートモハルが伝えたかったことは、もしかしたらこういうことなのかもしれません。。

湿気を含んだ外気を感じながら、トモハルがチケットを送り付けた理由を考えた。


ーこれからは、ファンとして応援して欲しい、と。


線引きをしっかりとしたから。
ファンとして見守っていて欲しい。



「うー…」


もう、殆どが中に入り、さっきより断然人が疎(まば)らになった道の真ん中で、こみ上げてきた涙が広がり、視界がぼやけ、立ち止まって手の甲で拭う。



ーそんなんじゃ、嫌…



我が儘だ。

こんな願望が、自分の中に生まれるなんてと驚く。



でも、そんなんじゃ、嫌だ。


確かにあの夏、あんなに傍にいたのに。

握った手の温度を覚えてるのに。

話したのに。

隣に座っていたのに。

一緒にご飯を食べて、お菓子を食べて、お茶を飲んで。

並んで空を見たのに。

待ち侘びて、また会えたのに。

確かに私に、笑ってくれたのに。


こんなに。




こんなに、好きなのに。


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