いろはにほへと
「え―?」





ごくりと、生唾を飲む音が自分から聞こえる。






この人、今何て言った?






トモハルって、言った?






え、この場合どうしたらいいんだろう。





トモハルはこの人から逃げてるの?



でもこないだ来た人たちは男の人達だった。




しかも、この確信のこもった言い方。




トモハルが、ここに居ることを、知ってるの?






生温い風が、吹く。






何も言うことができないまま、私は呆然と目の前の可愛らしい女の人を見つめた。






「…居るんでしょ?」





女の人の表情は、相変わらず微笑んでいるのだが、心なしかさっきよりも口調がきつく聞こえる。





「え、いや…」





完全にテンパりながら、それでも、自分の内から不思議な憤りがでてくるのを感じる。




この女(ひと)は一体、トモハルのなんだというんだろう。




私に恋を教えるとか言いながら。





「ねぇ、ちょっと!」



「居ません!!!!!」





かわいい女の人に、肩をがばっと掴まれたと同時に叫んでいた。
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