いろはにほへと
「え?!…居ない?」




結構強気だった女の人が急に狼狽(うろた)え始める。




私は唇をぎゅっと噛み締めて、一度俯いた顔をきっと女の人に向けた。




「はい。居ませんし、そんな人存じあげません。そもそもここは藤崎さんのお宅であって、そんな関係のない人間が居るわけないです。」





「…あれ、、間違えちゃったかな…」




女の人はぶつぶつとひとりで何やら呟いている。






「お引き取りください。」




「う…」





もう一度強く見つめ返せば、女の人は半歩後ずさった。






「おかしいわね…。…どうも、すみませんでした。」






やがて、そう呟くと来た道を引き返していく。




その背中を暫く見つめてから、私は下に置いた荷物を持って中に入った。






なんか。。。





どうしてだろう。




とても、ムカムカする。





玄関先の電灯が控えめに照らされている中、庭がおぼろに見える。





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