いろはにほへと
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数日経つと、トモハルが本当に居なくなったのだという現実を突きつけられた気がした。






暫く、何も手に付かなかった。





朝、起きれば、トモハルがどこかに隠れているんじゃないかと思う。



縁側で庭を見ているかもと探す。




離れに行っているのかなと考える。




でもそのどれも、当たってはいない。





姫子さんの屋敷には、昨夏と同じように自分一人しか居なかった。






帰る前日になって、やっと縁側に座って、赤いラジオのスイッチを入れることが出来た。





開いた引き戸に身体の右側を預けて、目を瞑る。






≪もうすぐ夏休みも終わりですねー!どうですか?どんな夏休みでしたか?海とか山とか、恋や失恋、様々だと思いますけど!全部良い思い出ですね!ではではでは!この夏、日本で一番流れていたと言っても過言ではないこの曲で夏の思い出に浸っちゃってくださいっ!ルーチェで『泣き空』!≫





どうも、自分は、鈍いようで。





「ふっ…」




今やっと涙が零れてくる辺り。



今やっと別れを確信する辺り。





馬鹿だなぁ、と思う。




この夏、繰り返し繰り返し聴いた
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