いろはにほへと
ちっぽけなのに
―本格的な夏が始まる少し前。
「非常に嬉しいことに、先日リリースしたばかりの『泣き空』がランキング1位を獲得しましたー!!!」
早川の誇らしげな報告に、メンバーが沸く。
場所は都内のスタジオ。
デビュー直後から、好きな時に好きなだけ使って良いと宛がってもらったルーチェ専用のスタジオだ。
会社からそんなふうに優遇される程、それこそインディーズの時から、ルーチェは鰻上りに売れていた。
こんな風に、早川が報告しに来たのだっていつものことだ。
それでも、中高から一緒の仲間たちは毎回同じようにして本当に喜ぶ。
全員仲が本当に良かった。
バンド関係では中々珍しいことらしいが。
「遥、どうした?浮かない顔して」
早川が一番後ろの椅子に座って、腕組みをしている那遥に声を掛ける。
メンバーも全員揃って振り返った。
「いや?んなことねーよ?」
笑ってはぐらかしたものの、自分の心は当たり前だけど騙せるわけがなく。
かといって言葉に出来るほどはっきりとした思いもない。
強いていうなら、薄ぼんやりとした焦燥感みたいなものが、自分の内を這っていくような感じだった。
「非常に嬉しいことに、先日リリースしたばかりの『泣き空』がランキング1位を獲得しましたー!!!」
早川の誇らしげな報告に、メンバーが沸く。
場所は都内のスタジオ。
デビュー直後から、好きな時に好きなだけ使って良いと宛がってもらったルーチェ専用のスタジオだ。
会社からそんなふうに優遇される程、それこそインディーズの時から、ルーチェは鰻上りに売れていた。
こんな風に、早川が報告しに来たのだっていつものことだ。
それでも、中高から一緒の仲間たちは毎回同じようにして本当に喜ぶ。
全員仲が本当に良かった。
バンド関係では中々珍しいことらしいが。
「遥、どうした?浮かない顔して」
早川が一番後ろの椅子に座って、腕組みをしている那遥に声を掛ける。
メンバーも全員揃って振り返った。
「いや?んなことねーよ?」
笑ってはぐらかしたものの、自分の心は当たり前だけど騙せるわけがなく。
かといって言葉に出来るほどはっきりとした思いもない。
強いていうなら、薄ぼんやりとした焦燥感みたいなものが、自分の内を這っていくような感じだった。