いろはにほへと
「…そりゃ、嫌だよ。」




シャッターが閉じている商店街の中を通って、ゆっくり歩く。




蛍光灯の光が、薄暗い。





「遥がどんな風にして曲作ってるか、俺わかるし。できない!って言えばまこちゃんも諦めるかもよ?メディアに出るのだって、本当は嫌なんだろ?」





言いながら、孝祐が横目で俺をチラリと見る。





「正直、面倒。」




必要なことだとはわかってるから、我慢はしているが、特にテレビが苦手だった。



だから、極力断ってもらっていた。



出演すればしたで、それなりにはやるのだが。





「9月からはツアー始まるし、あんなに仕事とってきてもらっても、俺等の手の数は決まってるし。」




何かひとつ増やすごとに、何か少しだけ雑になってしまうんじゃないかと恐かった。



ここ数年、それくらい、しっちゃきになって、ずっと走ってきた。




その分、自分の思い描いているものを作り出すことが、至極困難だった。

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