いろはにほへと
「どういう意味?」
俺の顔つきが険しくなったことなど気付かない早川は、
「インディーズの時とか、そうでなくても作ったけど出さなかったのとか、あるでしょ?」
飄々と言ってのけた。
瞬間。
「…っざけんなよ。」
「うわっ」
手にしていたペットボトルを早川に投げつけて、立ち上がった。
「何すっ…」
そんな早川の胸倉を掴み、引き寄せる。
「もう、無理」
それだけ言うと、パッと早川から離れ、その場から立ち去った。
自分の作ったものが、そんな風に扱われたことに、無性に腹が立った。
「おい!30分後には戻れよ!」
後ろから、プロデューサーの声が聞こえるが、二度と戻ってやるもんか、と心の中で毒づいた。
そこから、タクシーを使って民宿を探し、そこで暫く頭を冷やしてから考えをまとめようと思った。