いろはにほへと
ただ。


田舎の道は本当に隠れる所が何処もなくて。



絶体絶命だった。





「待てこの~!!!!!」




バタバタと重たい靴の音を鳴らして、早川が叫ぶ。




蝉の声にさえ気付けないほど、焦っていた。





―なんだ、この塀。やけに長く続いてるな。




そこにひたすら続く、灰色の塀。




「!」




角を曲がったところで、急になだらかな坂になっていて、既の所で体勢が崩れそうになったのを堪えた。




―あぁ、やべぇ。





今ので少し失速した。




早川達が追いついてしまう。





ここまでか、と諦めかけた時。





塀の切れ目を見つけた。







―数奇屋門。。






考える暇もなく、門に手を掛ける。






ガラッピシャン!タタタッ!





―良かった、鍵が掛かってなかった。





更に好都合なことに、雑草が一m以上伸びている荒れ放題の庭が目の前に広がっている。





迷いなどなく、その中に飛び込んだ。



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