いろはにほへと
あの子―。




こっちを見ているような気がするけど、もしかして見えてないのかな。


何しろ、後ろも長いが、前髪が長すぎる。




もしバレてて、叫ばれでもしたら俺間違いなく終わりだ。



折角緩んだ緊張の糸が、またピンと張る。





お願いだ、見えてないでくれ。




あれだけ奇声を発したのは自分なのに、理不尽なことを願った。




その願い虚しく、何かに気付いたような口調で女の子は口を開く。





「あなた―」





そこに無情にも、ラジオから聞こえてくる情報が、更に自分の状況を悪化させる。







≪失踪中のハルさん、スランプが原因だと言われてますけど、ファン皆待ってるんでね!早く帰ってきて、また良い曲作ってくださいね~!!!!≫





―うわ。冗談じゃない。








終わったと思った。






サングラスもない。




バレた。



絶対バレた。


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