いろはにほへと
「いや、その…違うから、違いますから…」
脚立の上の女の子は微動だにしない。
もう、何を言っても駄目な気がした。
ここまでか―
「前髪、目に掛かってるんですね。」
「ちがいま………え?!」
―今、なんつった?この女…
もしかして、、バレて、ない?
ほっとしたのも束の間、女の子が乗っていた脚立がバランスを崩したように揺れる―
「あ、危ないっ!!!」
咄嗟に走り出す。
ガシャン!!!!!ガターン!!!!
もう少しで床に叩き落されそうになった女の子をぎりぎりで受け止めた。
―軽い子で、良かった。
予想以上に女の子の身体が軽くて驚く。
そうじゃなければ、受け止めても、こちら側のダメージがでかすぎて、暫く動けなくなってしまう所だった。
「すみません…」
抱えた女の子は、小さく呟く。
「大丈夫…?」
訊ねれば、コクンと頷き、身を捩って俺を見た、ようだ。
前髪で、見えないけど。
「大丈夫です。ところで、あの…」