いろはにほへと
おずおずといった感じで、女の子は首を傾げる。
「貴方、どなたでしょうか?」
この子、天然か?
なんか、無防備過ぎないか?
幾ら仕方ないとはいえ、知らない男が入ってきて、この状態。
落ち着きすぎている。
しかし、さて、どうしたものかと考える余裕もなく。
「おい!もしかしてここの中入って行ったか?」
大きなプロデューサーの声が聞こえた。
―しつこい奴等だな。
内心、舌打ちしていると。
「あれは、貴方を捜しているのでは―「しっ!」!?」
女の子が気付いたので、その口を申し訳ないけど塞いだ。
女の子は驚いてはいるようだが、抵抗はしない。
―ごめんね。
口には出さないが、謝りつつ、半ば人質と立てこもっているような妙な気分になる。
庭から部屋の中は、あの草を掻き分けて入ってこようとしない限り見えないけれど、念には念を、だ。
万が一入ってきても直ぐには見つからないよう、部屋の隅に移動した。