元殺し屋と、殺し屋~anotherstory~







俺は常に女子に囲まれるイライラに負け、多くの女子を入院に追い込んだ。

“誰か”を死なせるのが嫌で浅く切っていたが、イライラが溜まり、深く切るようになった。

俺に切られ、その場で意識を失うことも少なくなかった。


俺が犯したプチ傷害事件を、学校はもみ消した。

自分の学校の生徒が傷害事件を起こすなんて、世間に知られたくなかったのだろう。


俺は精神病院に送りこまれることもなく、1日1人は切っていた。

何度も父親が呼ばれたが、父親もそういう趣味を持っているので、「指導します」で終わった。

そもそも仕事柄があるから、「人を傷つけるな」などと俺に言えなかったのだ。


だって、人を殺すことを職業とする人たちに仕事を渡す父親が、「人を殺すことはいけないことです」などと言えるわけがない。

だって自分が守っていないんだから。




俺はそういう特殊な家庭で、環境で育った。

財閥の令嬢御曹司が通うような学校はあっても、殺し屋が通う学校はなかったので、俺は一般の高校に入学した。

入学式で名前を呼ばれて返事をしただけなのに、黄色い声が上がる。

この学校でも俺は、“誰か”を傷つけるんだろうな。

そう信じていた。




しかし、俺が傷つけたのは、殺し屋であった紅羽とレイだけ。

それ以外、俺に殺人衝動が出ることはなかった。



それに、俺に「大切にしたい」と思えるような存在が出来た。

それが知紗だった。


金髪でチャラくて。

どちらかといえば真面目キャラの俺と合うはずがなかった。



それなのに。

俺は知紗に、恋をした。









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