元殺し屋と、殺し屋~anotherstory~
女性はチョコレート色の髪を肩より少し長く伸ばしている。
夏らしく、花柄の膝までのワンピースを着ている。
右肩に黒の鞄を持っている。
右手に地図を持ち、左手には最寄り駅の所にあるデパートの紙袋を持っている。
しきりに誰かに話しかけようとしているけど、誰も彼女になんて気にしない。
まぁそうだろうな。
この辺りは裏の世界の人間が多い。
そのため、彼女のように表の人間には極力関わらない。
僕も闇の世界の人間。
彼女のことは見なかったことにして、バーへと続く道を歩き始めた。
冷たい人間だと思ってもらって結構だ。
僕は名前の通り、冷たくコオリのような人間。
情報屋とは、そういうモノだ。
「どうしたんですかー?」
突然聞こえた明るい声。
・・・その声に、聞き覚えがある。
紅羽だ。
あの明るさは。
元殺し屋とは思えない。
しかも、世界一で連続殺人鬼とされていたダークだとは。
「え?アイス?」
アイス?
僕のコードネームであり、バーの名前だ。
譲り受けた時、名前をめんどくさいからコードネームと一緒にしたんだ。