元殺し屋と、殺し屋~anotherstory~
陽詩を入れた後、僕は扉の鍵を閉めた。
クローズの看板だけでは、アテにならないから。
勝手に入る人もいるし。
あのバカップルが、良い例だ。
僕は陽詩にあの時と同じ、アイスミルクティーを出した。
あの時・・・陽詩が初めて僕のバーに来た時。
「あたしの本名は、漢字はこの前に渡した名刺と同じです。
読み方が違うだけで・・・」
「読み方?」
「はい。あたしは、イズミヒナタと言います」
和泉陽詩で、イズミ ヒナタか。
和泉をカセンと読まず、イズミと言う人は多いからな。
「ですからあたしは、和泉さんの妹ではありません」
・・・だろうな。
想像済みの答えだった。
「ただ、あたしは前に1度、和泉さんに会ったことあります」
「え?」
「あたしは・・・佐藤陽也(さとう・はるや)の妹です」
「・・・は、陽也さんの!?」
思わず叫ぶ。
陽也さんは、
僕の・・・恩人だ・・・・・。