元殺し屋と、殺し屋~anotherstory~








「最後のネタばらしです。
何故あたしが妹と名乗って和泉さんの前に現れたかです」

「うん・・・」

「お兄ちゃんからの手紙の最後に書かれていたんです。

折角両親と会えたのに死んでいるとわかったら、きっと氷は再び孤独になる。
だから、氷と出会うときは、妹として会ってあげてほしい。
ささやかな間でも、氷を孤独だと感じさせないであげてほしいって。

あたしが母親の名字であるイズミであるとお兄ちゃんは知っていて。
イズミとカセン・・・読み方は違いますけど、漢字は同じで。
妹として現れても、別に可笑しくはないって。

現にあたしにはお兄ちゃんいますし。
好きな人に会えるんだったら・・・あたしはどんなことでもしたかったんです」




―――『氷くんにも、いつか大切だと思える相手が現れますよ』




いつだったか、佐藤さんは熱で赤い顔をしながら僕に言った。

きっとその頃には、手紙を出していたのだろう。




佐藤さんは知っていたのだ。

自分が言えるまで、生きる時間はない・・・と。




だからその時言わず、手紙で伝えたのだ。

自分の死を悟って。




「そういえば和泉さんはわかりますか?」

「何を?」

「この手紙が送られた日ですよ。
何でお兄ちゃんは、その日にしたんでしょうか?」

「いつ?」

「11月2日です」










< 192 / 283 >

この作品をシェア

pagetop