元殺し屋と、殺し屋~anotherstory~
「氷くんこの後空いている?」
「夕方の6時までなら、空いているよ」
「なら一緒にお兄ちゃんのお墓参り行かない?
お兄ちゃんに伝えたくてさ」
「良いよ一緒に行こう!」
店を閉めた僕は、途中花屋さんにより、向日葵を購入した。
「そういえば、お父さん知っているの?」
「うん、知っているよ。
でも名字が違うから、他の人は知らないの」
和泉兄妹のお父さん・佐藤会長は、その後委員会を辞めた。
捨てたとはいえ実の息子を死なせた罪は重い。
名乗り出たわけではないから、逮捕とかはされていないけど、やはり医者を続けて行く自信がなくなり、今は普通の会社員として生活しているらしい。
「そういえばこの間ね、お父さんお兄ちゃんのお墓参りに来てくれたの」
「そうなんだ、良かったね」
「お父さん泣いていた。
もっと生かしてやりたかったって」
「やはり後悔はするんだね・・・」
「お母さんと離婚したのがよっぽど傷だったみたいで。
その傷のせいで、お兄ちゃんに当たっちゃったんだって」
「お父さんも、悪くはないんだろうね・・・。
いや、悪いんだけど、そう言われると責められないな」
「運命の歯車が狂ったってやつ?
この間読んだ本に載っていたんだけど」
「そうだね・・・。
そんな感じだと思うよ」
「でもお兄ちゃんは幸せだったよ。
氷くんに会えたんだもん」
「優しい陽詩もいるしね」
「氷くん詩人になれるよ」
「それ、陽詩もでしょ?」
僕らはバスの中にいるにもかかわらず、笑った。