元殺し屋と、殺し屋~anotherstory~








申し訳なさそうに謝る紅羽の瞳には、涙が浮かんできている。

そして溜まり切れなくなった涙は、静かに溢れ出す。

ヒックヒックと嗚咽を漏らしながら、紅羽は泣く。



俺はそっと、紅羽の頭をなでた。

1分も経っていないはずなのに、紅羽の目はもう真っ赤だ。

驚いた潤んだ瞳を俺に向ける紅羽。

俺は微笑むと、フレンチトーストをかじった。




ガリッ




焦げているからか変な音がしたけど。

中身は案外ちゃんとしていた。

外側をちゃんと焦がさず焼けるようになれば、本当に美味いフレンチトーストになるだろう。




「澪鵺!お腹壊しちゃうよぉ・・・」

「安心して紅羽。
俺はそんなに弱くないから。
むしろ紅羽の折角作ってくれたフレンチトースト食べないでいる方が、俺は嫌だな」

「・・・澪鵺ぁ」



ボロボロ大粒の涙を流す紅羽。

本当、紅羽を見ていると、癒されるわ。



「ありがとう作ってくれて」



頬に触れると、ベタリとした感触がした。



「紅羽、顔に何つけているんだ?」







< 208 / 283 >

この作品をシェア

pagetop