元殺し屋と、殺し屋~anotherstory~
俺が聞くと、紅羽は途端に泣くのを止め、ポッと顔を赤くした。
紅羽、君はどこの少女漫画の主人公だい?
「バターをね、フライパンに全部投入しちゃったの。
そうしたら、思い切りバターがはじけて、顔に少し当たったの」
なるほど。
バターは油だから、こんなにベタベタしたのか。
ところで・・・どこのドジっ子だよ。
今時そんなことする奴、いないんだろうなぁ。
紅羽だけで、十分だよ。
「紅羽、他にも俺に説明していないことあるよね?」
「へ・・・?」
「紅羽最近、俺に冷たいよね。
俺だけじゃなく、相島や逢沢、恭真や総司にも」
「・・・そうかなぁ?」
「この間、俺が声かけた時、紅羽何の本読んでいたの?
俺が覗いたら、思い切り拒否したよね?」
ニコリと微笑むと、紅羽は口元を引きつらせた。
どうしたんだい紅羽。
そんなに俺の笑顔は・・・怖いかい?
「・・・遅かったんだもん、意味ないよ」
「遅かった?」
「だって・・・澪鵺風邪引いちゃった」
「どういうこと?」
俺が聞くと、紅羽はポツポツ話し始めた。