元殺し屋と、殺し屋~anotherstory~
ある時。
父親に母親の浮気がバレた。
何でもこの間連れてきた男が、父親の会社の部下だったらしい。
付き合っている女、として母親が写ったので、父親は会社を無断で早退し、急いで家に帰ってきたのだ。
兄貴は何も知らないため、ただ泣きながら親が喧嘩しているのを見ていた。
対してオレは修羅場になることを知っていたので、母親に閉じ込められる前に部屋に閉じこもった。
喧嘩している声が扉を閉めていても聞こえるので、オレは必死に耳を塞いだ。
数日後。
毎日続いた喧嘩は終わり、父親はいつも通り会社に出掛け、兄貴も何事もなかったかのように友達と遊びに出かけた。
オレに遊ぶ友達などいなかったので、いつも通り部屋で本を読んでいた。
「総司?いるの?出てきなさい」
突然母親に呼ばれ、オレはリビングへ向かった。
母親は気味悪いくらい微笑んでいた。
「お父様に告げ口したの、総司よね」
母親が嘘をついているとわかった。
父親は言っていた。
「部下が写真を見せてくれ、その写真に写っていた彼女が母親だ」と。
それなのに、何故オレが父親に告げ口したと言うんだ。
「悪い子にはお仕置きが必要ね」
オレは突然、母親に殴られた。