元殺し屋と、殺し屋~anotherstory~
兄貴は気まずそうに目を伏せた。
「何があったら俺に言え。
お母様と同じようになったら困る」
「わかった・・・」
そう言って兄貴は出て行った。
オレは女性恐怖症だということを必死に隠しながら学校生活を過ごした。
部活など興味あったけど、少しでも女子といる時間を少なくするため、諦めた。
「好きです」
告白されたのは突然だった。
「ごめん、付き合えない」
「どうして?」
「オレ女性恐怖症なんだ」
「そうなの・・・。
なら、必要最小限に関わる。
久保田くんの嫌な思いはさせない」
「・・・なら良いけど」
考えは甘かったのを、オレは知らない。
オレは彼女と付き合ってすぐぐらいのこと。
兄貴が送ってくれるお金で昼食を買おうと、財布を開けた。
確か中には3千円入っていた気がする。
「あれ?」
中には、1円も入っていなかった。