元殺し屋と、殺し屋~anotherstory~









その日の夜。

少し怖かったけど、久保田改め総司は襲ってはこなかった。



彼女じゃないし、カナは総司と違って男好きじゃないから、総司って呼ぶのには少し抵抗があったものの、

あの寂しい笑顔が見えないよう、カナは総司と呼ぶことにした。

何故か総司と呼ぶと、凄く嬉しそうなんだ。

あの寂しそうな笑顔が嘘みたいに。



「ねぇ、何で総司って呼んでほしいの?
そういうのは普通、彼女に呼んでほしいものなんじゃないの?」

「総司って名前、好きなんだよね。
新撰組の組長さん、知っている?
その人と同じ名前だから、オレ気に入っているの。
久保田って呼ばれると、他人行儀みたいで、好きじゃなくて」



馬鹿そうに見えるけど、総司は案外頭が良い。

他人行儀とか、難しそうな言葉も知っているし。

今なんて、新撰組の話をしている。

カナは歴史とか詳しくないから、よくわからぬまま頷いていたんだけど。



確かに、学校の成績も良い。

英語はカナや知紗の方が上だけど、他の教科に関してはどれもカナたちより点数が高い。

クラス順位は、神崎(かんざき)に続く2位だし。

ちなみに3位は恭真(きょうま)で、4位はカナと知紗。

頭良さそうに見える紅羽は、最下位ギリギリを彷徨っている。



正直、あんまり勉強とかしているイメージはないけど。

頭良い方が女の子にモテる!と思っているのかな?




人は見かけによらないものだと、総司を見ているとつくづく思う。







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