明日の地図の描き方
午後からは入浴しない方と一緒に外へ出る。園庭以外にも、近くに大きな公園や図書館があるから出かけたりもするんだって。
昨日はそこからの帰りを、私がたまたま見かけた事になる。
今日はお庭でゆっくりくつろぐ日。別世界のような雰囲気の園庭は、まるでユートピアのよう…。
(夢みたいな感じだな…)
のんびりゆったりして、心からリラックスできる。
まだたった半日しか経っていないけど、私はすっかりここが気に入ってしまった。
そして、皆さんお待ちかね、おやつタイム。
真っ先に子供達が交流室に飛び込んで来る。給食設備のないこの園でもお菓子は手作り。それがすごく美味しいの。
「皆月イチでおやつ作りの担当日があるから、前島さんも作ってね」
「えっ⁉︎ 私もですか⁉︎ 」
出来るかな…と、弱音吐く。そしたら松田さん、知恵貸してくれた。
「子供や利用者さん達と一緒に作ればいいのよ。リハビリにも遊びにもなるから」
お団子やクッキー、ホットケーキ…作ろうと思えば何でもOKよ!…と、楽しそうに語ってる。
この方の理想が、きっとここには沢山詰まってる。
四時になると、そろそろご家族のお迎えがやって来る。どんなに遅い方でも、五時にはお迎えに来てもらうシステムになってるから、そこから今日の反省会。リスクや一人一人の課題について、意見が飛び交う。そして、皆で掃除して解散。
無駄な残業しても時間給出ないから、早く帰りなさいと言われるのは、どこも一緒。
門扉を出たのは五時半過ぎ。今までの仕事から考えると、嘘みたいな早さ。
「どうでした?初日」
門扉を閉めたら、自転車に乗って出て来た藤堂さんと鉢合わせた。
「楽しくてあっという間でした。明日も来たいくらい」
嬉しくてついニコニコしてたのかも。藤堂さん、こっちを見て笑ってた。
「気に入ってもらえて良かった。また、明後日会いましょう!お疲れ様!」
「お疲れ様でした」
頭下げて駅へ向かう。その最中、珍しく鼻歌なんかも出たりして、いかに上機嫌か分かるでしょ。
踏切渡って駅舎に着くと、改札口近くに見たことある人が立ってて。
(あれ…?)
約束は金曜日の筈なのに…と思いつつも、嬉しくて走り出しちゃった。
「待っててくれたの?」
駆け寄って来た私を見てホッとしてる。心配してくれてた?。
「まぁちょっと、こっちに来るついでがあったから」
素直じゃないその言い方。可愛くないんだぁ。
「初日、お疲れ。無事済んだね」
「うんっ!とっても楽しくてあっという間だった。ゆっくり話したいけど、今日ダメでしょ?」
月・水・土は剣道の日。厳しい精神鍛錬の日だもんね。
「ごめん。今日はちょっと無理。金曜日にまた聞くよ」
ホームに列車入って来る。会えただけギリセーフか…。
「わかった。じゃあまた金曜日!」
手を振ってお別れ。つかの間だ。
(あーあ、残念。話したかったな…。でもいいか。私の笑ってる顔見て、安心してたし)
久しぶりの充実感。前の仕事なら、終わった後、残るのは疲労感だけだったのに。
列車に揺られ二駅目で下りる。徒歩で十分、我が家に到着。仕事が終わるの早いから、車も使わなくていい。
(時間たっぷりあるし…何しよ…)
ウキウキ。楽しくなってくる。
「お母さん、ただいま。お弁当ありがとう」
聞き慣れないお礼に母親の方がビックリ。
「夕飯作るの手伝うよ」
二人でキッチンに立つようになったの、私が仕事辞めてからだよね。それまではずっと忙し過ぎて、手伝おうって気にもならなかった。
仕事の話、ポツポツしながら手動かす。私がもしトオル君と結婚してお嫁に行ったら、こんな日常もなくなるね。
(まっ、“もし” だけどね…)
マジ交際してるってだけで、別に先の約束もしてないからね…。
夕飯終わって部屋へ上がった。仕事してない時は、一日が終わるのとても長く感じたけど、今日は早い。もう八時だって。
(トオル君、まだ稽古中か…)
夕方六時から九時まで剣道。小学校の時からずっとやってるんだって。ご苦労な人…。
「ふぁっ…さすがに疲れた…」
三ヶ月ぶりのフルタイム。どんなに楽しくても、やっぱり緊張してたのかも。一気に眠くなった。
ゴロン…
コタツでうたた寝。まどろみながら、今日一日、皆の楽しそうな顔が次々浮かんだ。
(『ほのぼの園』…名前通りだな…)
大切な何かを探し得たような一日だった。これからあそこで送る日々の中、きっと大事な物を見つけていけそうな気がする。
はっきりした未来もつくれそうな、予感さえしていた…。
昨日はそこからの帰りを、私がたまたま見かけた事になる。
今日はお庭でゆっくりくつろぐ日。別世界のような雰囲気の園庭は、まるでユートピアのよう…。
(夢みたいな感じだな…)
のんびりゆったりして、心からリラックスできる。
まだたった半日しか経っていないけど、私はすっかりここが気に入ってしまった。
そして、皆さんお待ちかね、おやつタイム。
真っ先に子供達が交流室に飛び込んで来る。給食設備のないこの園でもお菓子は手作り。それがすごく美味しいの。
「皆月イチでおやつ作りの担当日があるから、前島さんも作ってね」
「えっ⁉︎ 私もですか⁉︎ 」
出来るかな…と、弱音吐く。そしたら松田さん、知恵貸してくれた。
「子供や利用者さん達と一緒に作ればいいのよ。リハビリにも遊びにもなるから」
お団子やクッキー、ホットケーキ…作ろうと思えば何でもOKよ!…と、楽しそうに語ってる。
この方の理想が、きっとここには沢山詰まってる。
四時になると、そろそろご家族のお迎えがやって来る。どんなに遅い方でも、五時にはお迎えに来てもらうシステムになってるから、そこから今日の反省会。リスクや一人一人の課題について、意見が飛び交う。そして、皆で掃除して解散。
無駄な残業しても時間給出ないから、早く帰りなさいと言われるのは、どこも一緒。
門扉を出たのは五時半過ぎ。今までの仕事から考えると、嘘みたいな早さ。
「どうでした?初日」
門扉を閉めたら、自転車に乗って出て来た藤堂さんと鉢合わせた。
「楽しくてあっという間でした。明日も来たいくらい」
嬉しくてついニコニコしてたのかも。藤堂さん、こっちを見て笑ってた。
「気に入ってもらえて良かった。また、明後日会いましょう!お疲れ様!」
「お疲れ様でした」
頭下げて駅へ向かう。その最中、珍しく鼻歌なんかも出たりして、いかに上機嫌か分かるでしょ。
踏切渡って駅舎に着くと、改札口近くに見たことある人が立ってて。
(あれ…?)
約束は金曜日の筈なのに…と思いつつも、嬉しくて走り出しちゃった。
「待っててくれたの?」
駆け寄って来た私を見てホッとしてる。心配してくれてた?。
「まぁちょっと、こっちに来るついでがあったから」
素直じゃないその言い方。可愛くないんだぁ。
「初日、お疲れ。無事済んだね」
「うんっ!とっても楽しくてあっという間だった。ゆっくり話したいけど、今日ダメでしょ?」
月・水・土は剣道の日。厳しい精神鍛錬の日だもんね。
「ごめん。今日はちょっと無理。金曜日にまた聞くよ」
ホームに列車入って来る。会えただけギリセーフか…。
「わかった。じゃあまた金曜日!」
手を振ってお別れ。つかの間だ。
(あーあ、残念。話したかったな…。でもいいか。私の笑ってる顔見て、安心してたし)
久しぶりの充実感。前の仕事なら、終わった後、残るのは疲労感だけだったのに。
列車に揺られ二駅目で下りる。徒歩で十分、我が家に到着。仕事が終わるの早いから、車も使わなくていい。
(時間たっぷりあるし…何しよ…)
ウキウキ。楽しくなってくる。
「お母さん、ただいま。お弁当ありがとう」
聞き慣れないお礼に母親の方がビックリ。
「夕飯作るの手伝うよ」
二人でキッチンに立つようになったの、私が仕事辞めてからだよね。それまではずっと忙し過ぎて、手伝おうって気にもならなかった。
仕事の話、ポツポツしながら手動かす。私がもしトオル君と結婚してお嫁に行ったら、こんな日常もなくなるね。
(まっ、“もし” だけどね…)
マジ交際してるってだけで、別に先の約束もしてないからね…。
夕飯終わって部屋へ上がった。仕事してない時は、一日が終わるのとても長く感じたけど、今日は早い。もう八時だって。
(トオル君、まだ稽古中か…)
夕方六時から九時まで剣道。小学校の時からずっとやってるんだって。ご苦労な人…。
「ふぁっ…さすがに疲れた…」
三ヶ月ぶりのフルタイム。どんなに楽しくても、やっぱり緊張してたのかも。一気に眠くなった。
ゴロン…
コタツでうたた寝。まどろみながら、今日一日、皆の楽しそうな顔が次々浮かんだ。
(『ほのぼの園』…名前通りだな…)
大切な何かを探し得たような一日だった。これからあそこで送る日々の中、きっと大事な物を見つけていけそうな気がする。
はっきりした未来もつくれそうな、予感さえしていた…。