明日の地図の描き方
明日への切符
“年末厳重警戒週間”
（うーん…漢字がいっぱい並んでる…）
地区の交番便りの書面。
仕事帰り、隣に住んでる叔母から手渡された回覧板に挟んであった。
期間は十二月中旬から一月の初めまで。
（三週間もか…大変だな…）
ポリスの彼と付き合いだして三ヶ月そこら。実際、どれだけ大変な仕事かなんて、トオル君は絶対話さない。
あくまでも、私の前では一般人としての顔しか見せないから…。
「しばらく忙しいから会えないと思う」
（二日前に会った時そう言ってたの、このせいか…）
街が賑やかになる季節。いろいろと物騒だもんね……でも、しばらくってどのくらい…？
（…っていうか私達、最近いつ、ゆっくり会った？）
十二月に入り、『ほのぼの園』の仕事は週五日勤務になった。クリスマスの準備やお正月の準備で忙しい季節、利用者が毎年ドンと増えるから。おかげでトオル君ともゆっくり会う暇なくて、主に電話やメールで会話する日々。でも、それも毎日じゃない…。
（付き合ってるんだって実感、薄らぐよね。こういう日が続くと……）
チクチクチク…フェルトでクリスマスのオーナメント作り。
実はこれが私の唯一の趣味であり、特技（？）だったりする。
フェルトで人形や小物作り。中学の頃、手芸部に入ったのがキッカケで、学生時代はかなりハマってやっていた。
前の仕事は交替性で、時間にも気持ちにも余裕なかったから、あまり作ろうという気にはならなかったけど、今はほぼ定時に仕事も終わるし、またやってみようか…って気になった。
マスコット作り、こっそり仕事場へ持って行ったら、それを目ざとく藤堂さんに見つかってしまい…。
「クリスマスツリーに飾る“ 星 ” 作って下さいっ‼︎ 」
ーーと迫られ……。
（ホントにこの人、押しが強いと言うか無邪気と言うか…）
おかげで趣味、職場の人にバレちゃって、今や保育士の香本さんや宮部さんにも教えてる日々。
私にこんな趣味があるって、トオル君は何も知らないのにね…。でも、別に隠してる訳じゃなく、単に話してないだけ。
だって…
作りかけのオーナメント置いて、空き缶のフタ開ける。毛糸と編み針持って、一番ややこしい指を編み編み…。
スケートが趣味のトオル君と、ペアで編んでる手袋。これを渡して驚かせたいから、趣味も黙ってるの。
忙しい彼に、プレゼント渡せる時間があるかどうかは、謎だけどね。
（私にこんな女らしい趣味あるんだって知ったら、きっと驚くぞぉ…）
一人ほくそ笑む。
トオル君の喜ぶ顔、見たいだけなんだけどさ。
手に取ったケータイの待ち受け画面の顔、すましてる。
（会いたいな…）
ケータイの写真眺めてても、喋ってくれる訳じゃないしね。
諦めて続きを編み編み。こういう地道な作業って、肩凝るんだよね。
（でも好きだけど…）
コタツの中でゆっくり、ほっこり。
気づくと、ついウトウト…。気持ち良くて、いつの間にか眠ってしまってた。そこへ着メロが流れてきて驚いた。
（えっ…今何時⁈ ）
ケータイ手に取り、時間確認……夜中の二時だ。
（ええっ⁉︎ 二時⁉︎ ）
飛び起きた。こんな夜中に電話なんて、一体どーしたの⁉︎
「もしもし？」
ハラハラしながら出た私とは反対に、相手の様子はなんだか変。
（もしかして…酔ってる…？）
「あー…ミオ…？」
「そうだけど…どうしたの？こんな時間に…酔ってるの？」
「うん…今日、剣道会の忘年会あってさー…けっこー飲まされたからー」
あーあ、語尾伸びきってる。まるで締まりないや。
（相当酔ってるね、この調子じゃ…）
多分、時間もわからずにかけてきたんだろう。どこにいるのか、分かってんのかな。
「もしもしトオル君、今どこにいるの？自分の部屋？」
「ん〜…？ここ…誰ん家だったっけー…？」
剣道会の仲間の家ではしご酒してたら、誰の家か分らなくなったなー…って、どうなってんのよ。
（こんな人達に日本の治安守れるの⁈ ）
呆れるわぁ。日頃、どんだけ仕事のストレスあるか知らないけど、こんな場所も分らなくなる程酔っ払うなんて…。
「ねぇ、そんなので自分ん家帰れるの ⁉︎ 」
（多分帰れないよね、こんな調子じゃ…）
「だいじょーぶ！タクシーって手があるから…」
ふぁっ…て、欠伸聞こえるんですけどぉ？
「もしもし、トオ…」
「あーあ、しようがないなぁ。こんなに酔っちゃって…」
（えっ⁉︎）
女の人の声 ⁉︎
「えっ⁉︎ トオル君？今どこにいるの⁉︎ ねぇっ‼︎ 」
ピッ！
ーーええっ⁉︎ き…切れちゃった！な、何故⁉︎
「じゃなくて、何よ！今の女の人の声‼︎ 」
剣道会って、ポリス関係の人ばかりでやってるんじゃないの⁉︎
（あっ、いや、ポリスにもいたじゃん！女性が…。あっ、でも、トオル君、前に同業者には興味ないって言ってたし…。あっ、でも、トオル君、今めちゃめちゃ酔ってたから、その気がなくても相手にその気があれば…。あっ、しかし、あの状態で何かあるとも考えにくいし…。あっ、でも……）
考えグルグル回っちゃう。頭の中、モヤモヤしてきた。
（こっちから電話かけてみよーか…）
でも、さっきの女の人が出たらどうしよう…って、怖くてかけられもせず、結局そのまま気になって一睡もできなくて、朝方ついウトウトしちゃってーーー…。
（うーん…漢字がいっぱい並んでる…）
地区の交番便りの書面。
仕事帰り、隣に住んでる叔母から手渡された回覧板に挟んであった。
期間は十二月中旬から一月の初めまで。
（三週間もか…大変だな…）
ポリスの彼と付き合いだして三ヶ月そこら。実際、どれだけ大変な仕事かなんて、トオル君は絶対話さない。
あくまでも、私の前では一般人としての顔しか見せないから…。
「しばらく忙しいから会えないと思う」
（二日前に会った時そう言ってたの、このせいか…）
街が賑やかになる季節。いろいろと物騒だもんね……でも、しばらくってどのくらい…？
（…っていうか私達、最近いつ、ゆっくり会った？）
十二月に入り、『ほのぼの園』の仕事は週五日勤務になった。クリスマスの準備やお正月の準備で忙しい季節、利用者が毎年ドンと増えるから。おかげでトオル君ともゆっくり会う暇なくて、主に電話やメールで会話する日々。でも、それも毎日じゃない…。
（付き合ってるんだって実感、薄らぐよね。こういう日が続くと……）
チクチクチク…フェルトでクリスマスのオーナメント作り。
実はこれが私の唯一の趣味であり、特技（？）だったりする。
フェルトで人形や小物作り。中学の頃、手芸部に入ったのがキッカケで、学生時代はかなりハマってやっていた。
前の仕事は交替性で、時間にも気持ちにも余裕なかったから、あまり作ろうという気にはならなかったけど、今はほぼ定時に仕事も終わるし、またやってみようか…って気になった。
マスコット作り、こっそり仕事場へ持って行ったら、それを目ざとく藤堂さんに見つかってしまい…。
「クリスマスツリーに飾る“ 星 ” 作って下さいっ‼︎ 」
ーーと迫られ……。
（ホントにこの人、押しが強いと言うか無邪気と言うか…）
おかげで趣味、職場の人にバレちゃって、今や保育士の香本さんや宮部さんにも教えてる日々。
私にこんな趣味があるって、トオル君は何も知らないのにね…。でも、別に隠してる訳じゃなく、単に話してないだけ。
だって…
作りかけのオーナメント置いて、空き缶のフタ開ける。毛糸と編み針持って、一番ややこしい指を編み編み…。
スケートが趣味のトオル君と、ペアで編んでる手袋。これを渡して驚かせたいから、趣味も黙ってるの。
忙しい彼に、プレゼント渡せる時間があるかどうかは、謎だけどね。
（私にこんな女らしい趣味あるんだって知ったら、きっと驚くぞぉ…）
一人ほくそ笑む。
トオル君の喜ぶ顔、見たいだけなんだけどさ。
手に取ったケータイの待ち受け画面の顔、すましてる。
（会いたいな…）
ケータイの写真眺めてても、喋ってくれる訳じゃないしね。
諦めて続きを編み編み。こういう地道な作業って、肩凝るんだよね。
（でも好きだけど…）
コタツの中でゆっくり、ほっこり。
気づくと、ついウトウト…。気持ち良くて、いつの間にか眠ってしまってた。そこへ着メロが流れてきて驚いた。
（えっ…今何時⁈ ）
ケータイ手に取り、時間確認……夜中の二時だ。
（ええっ⁉︎ 二時⁉︎ ）
飛び起きた。こんな夜中に電話なんて、一体どーしたの⁉︎
「もしもし？」
ハラハラしながら出た私とは反対に、相手の様子はなんだか変。
（もしかして…酔ってる…？）
「あー…ミオ…？」
「そうだけど…どうしたの？こんな時間に…酔ってるの？」
「うん…今日、剣道会の忘年会あってさー…けっこー飲まされたからー」
あーあ、語尾伸びきってる。まるで締まりないや。
（相当酔ってるね、この調子じゃ…）
多分、時間もわからずにかけてきたんだろう。どこにいるのか、分かってんのかな。
「もしもしトオル君、今どこにいるの？自分の部屋？」
「ん〜…？ここ…誰ん家だったっけー…？」
剣道会の仲間の家ではしご酒してたら、誰の家か分らなくなったなー…って、どうなってんのよ。
（こんな人達に日本の治安守れるの⁈ ）
呆れるわぁ。日頃、どんだけ仕事のストレスあるか知らないけど、こんな場所も分らなくなる程酔っ払うなんて…。
「ねぇ、そんなので自分ん家帰れるの ⁉︎ 」
（多分帰れないよね、こんな調子じゃ…）
「だいじょーぶ！タクシーって手があるから…」
ふぁっ…て、欠伸聞こえるんですけどぉ？
「もしもし、トオ…」
「あーあ、しようがないなぁ。こんなに酔っちゃって…」
（えっ⁉︎）
女の人の声 ⁉︎
「えっ⁉︎ トオル君？今どこにいるの⁉︎ ねぇっ‼︎ 」
ピッ！
ーーええっ⁉︎ き…切れちゃった！な、何故⁉︎
「じゃなくて、何よ！今の女の人の声‼︎ 」
剣道会って、ポリス関係の人ばかりでやってるんじゃないの⁉︎
（あっ、いや、ポリスにもいたじゃん！女性が…。あっ、でも、トオル君、前に同業者には興味ないって言ってたし…。あっ、でも、トオル君、今めちゃめちゃ酔ってたから、その気がなくても相手にその気があれば…。あっ、しかし、あの状態で何かあるとも考えにくいし…。あっ、でも……）
考えグルグル回っちゃう。頭の中、モヤモヤしてきた。
（こっちから電話かけてみよーか…）
でも、さっきの女の人が出たらどうしよう…って、怖くてかけられもせず、結局そのまま気になって一睡もできなくて、朝方ついウトウトしちゃってーーー…。
