明日の地図の描き方
あの旅行の夜、小野山さんが指定した場所で待ち合わせ。
(うーん…何故テーマパーク…?)
大人だよね。私達…。
入場ゲートの前で、パークの看板目で追う。多分、ここに来たのって中学生以来かな。
ある種のノスタルジー感じちゃう。何も考えてなかった頃の自分に出会えるか…⁈
(いやいや、それ絶対ない…)
頭を振り、はぁ…と溜め息。
「遅いなぁー小野山さん…」
かれこれ三十分くらい待ってる。私、もしかしてからかわれた⁈ って気すらしてきた。
(よしっ、あと十分待っても来なかったら帰ろ)
“お試し”でお会いするつもりだったから、メルアドもケータイも聞かなかった。だけど、こんな事ならナンバーだけでも聞いとけば良かった…と思い始めた頃、すごい息切らして男の人が走って来た。
(あっ…)
チェックのパーカーに黒いTシャツ、Gパン履いてるあの人って、若く見えるけど、小野山さん…だよね⁈
「…す…すみません…かなり…遅くなってしまって…」
ゼイゼイハアハア言ってる。なんか気の毒だ〜。
「いいですけど…大丈夫ですか?どこから走って来たんですか?」
駐車場は隣接してるし、そっちから来なかったし…。
「家から…です…」
「家から⁉︎ ご自宅から走って来たんですか⁉︎ 」
この辺に家なんて、見える範囲ないよ⁉︎
「どのくらい離れてるんですか?」
気になってきたよ…。
「走って…二十分強…距離だと15kmくらいかと…思いますけど…」
「そんな所から走って来たんですか⁉︎ 」
呆れた…って言葉、呑み込んだ。どういう人なの⁉︎ この人。
「…来るまでに人助けしてたら、思った以上に時間食っちゃって…」
笑ってごまかし。何してた…?
「人助けって…もしかして、この間言ってた人探し?」
二度目に会った時、言ってたもんね。時々するって。
「いえ、犬探し…です」
「犬⁈ 」
Dog…ですよね。
「近所で飼ってるチワワが散歩中逃亡したらしくて、飼い主の子供が大泣きしてたんですよ…だから見過ごせなくなっちゃって…」
なるほど…さすがお巡りさん…だね。
「それで?見つかったんですか?その犬」
「はい。親御さんが自宅に犬だけ帰って来たから、子供さんを探しに来られて、一件落着です」
「そう…なら良かった…」
この間といい、今日といい、休日なのに正義感出しちゃって。ほっとけない人なんだな…この人。
「すみませんでした。前島さんを待たせてしまって…」
真顔で反省してる。いいのに別に。
「もう帰ってたらどうしようかと思って、ハラハラしながら来ました」
ププッ…笑っちゃ悪いけど、そう思うなら人助けも程々ですよ。
「あと十分待って来なかったら、帰るとこでした。ギリギリセーフでしたね」
嫌味でなく、さらっと言ってしまった。だってこの人、そんなのも気にしそうな感じだもん。
「待っててくれて助かりました。次から気をつけます」
(…はい、気をつけて)
思わずエラそうに言いたくなって、肝心な所気にしてなかった。今、この人、次って言った⁈
(次…あるのかな…。だったらやっぱり聞いとかないと…)
「次は…待ちませんよ」
「えっ⁉︎ 」
「だから遅れても大丈夫なように、ケータイのナンバー教えといて下さい。そしたら安心して待てるので」
いいですか⁈…って問いかけにホッとしてる。なんかこの人、可愛いかも…。
ナンバーとメルアド交換し合って小野山さん、気を取り直したご様子。
「じゃあ入りますか」
なんだか楽しそう。
「お好きなんですか?テーマパーク」
あっ…パスポート代出してくれてる。しかもさり気ない。
「ここはアトラクションよりも面白い場所があるんで好きなんです」
はい…とパスポート手渡してくれる。ぺこりと一礼。受け取りながら聞いてみた。
「アトラクションより面白い所って、どこですか?」
そんなに面白い所あったっけ?なにせ私、ここに来たの二十年ぶりくらいだもんな…。
「入ったら分かりますよ」
嬉しそうに笑うなぁ。小野山さんて、もしかしてテーマパーク通⁈
(……な訳ないか)
ゲートくぐると、キャラクターの着ぐるみ達がお出迎え。
わー昔と変わらないんだぁ…って、当たり前か。
取り敢えず、手振られたから振り返す。いつ来ても、童心に帰るよね、こういう所って。
「どこから行きます?」
地図広げながら小野山さんて聞く。そりゃーやっぱり…
「アトラクションよりも面白い所!」
しかないよね。
「じゃあこっちです」
入場ゲートから真っ直ぐ直進。地図なんか見もしないで歩いてく。
(こりゃ相当通ってるな…)
恋人でも何でもないから手も繋がないけど、とりあえず小野山さん、私の歩調に合わせてくれてるみたい。優しいな。
それでもって、とある建物の前でストップ。
「これです」
指差す看板の文字、目で追った。
「アイス・スケート・リンク…」
…て、つまりこれ…
「スケート場ですか⁈ 」
大きな声出す私に、小野山さんの冷静な答え。
「そうです」
そうです…って、そんな、当たり前のように言われてもさぁ…。
「私、滑れませんよ」
だって生まれてこの方、スケートなんてした事ないもん。
「大丈夫です。僕、滑れますから」
(いや、そりゃ、あなたはそうでしょーけどぉ)
…って、こっちの不安、まるで無視して中に入って行く。こっちこっち…て、いや、手を振られても…。
思わず尻込み。
(あっ、でもそっか。これも“お試し”なんだ)
経験ないこともやってみようって、決めたんだっけ。
意を決して、ホントにすごい勇気振り絞って、ついて行った。
(うーん…何故テーマパーク…?)
大人だよね。私達…。
入場ゲートの前で、パークの看板目で追う。多分、ここに来たのって中学生以来かな。
ある種のノスタルジー感じちゃう。何も考えてなかった頃の自分に出会えるか…⁈
(いやいや、それ絶対ない…)
頭を振り、はぁ…と溜め息。
「遅いなぁー小野山さん…」
かれこれ三十分くらい待ってる。私、もしかしてからかわれた⁈ って気すらしてきた。
(よしっ、あと十分待っても来なかったら帰ろ)
“お試し”でお会いするつもりだったから、メルアドもケータイも聞かなかった。だけど、こんな事ならナンバーだけでも聞いとけば良かった…と思い始めた頃、すごい息切らして男の人が走って来た。
(あっ…)
チェックのパーカーに黒いTシャツ、Gパン履いてるあの人って、若く見えるけど、小野山さん…だよね⁈
「…す…すみません…かなり…遅くなってしまって…」
ゼイゼイハアハア言ってる。なんか気の毒だ〜。
「いいですけど…大丈夫ですか?どこから走って来たんですか?」
駐車場は隣接してるし、そっちから来なかったし…。
「家から…です…」
「家から⁉︎ ご自宅から走って来たんですか⁉︎ 」
この辺に家なんて、見える範囲ないよ⁉︎
「どのくらい離れてるんですか?」
気になってきたよ…。
「走って…二十分強…距離だと15kmくらいかと…思いますけど…」
「そんな所から走って来たんですか⁉︎ 」
呆れた…って言葉、呑み込んだ。どういう人なの⁉︎ この人。
「…来るまでに人助けしてたら、思った以上に時間食っちゃって…」
笑ってごまかし。何してた…?
「人助けって…もしかして、この間言ってた人探し?」
二度目に会った時、言ってたもんね。時々するって。
「いえ、犬探し…です」
「犬⁈ 」
Dog…ですよね。
「近所で飼ってるチワワが散歩中逃亡したらしくて、飼い主の子供が大泣きしてたんですよ…だから見過ごせなくなっちゃって…」
なるほど…さすがお巡りさん…だね。
「それで?見つかったんですか?その犬」
「はい。親御さんが自宅に犬だけ帰って来たから、子供さんを探しに来られて、一件落着です」
「そう…なら良かった…」
この間といい、今日といい、休日なのに正義感出しちゃって。ほっとけない人なんだな…この人。
「すみませんでした。前島さんを待たせてしまって…」
真顔で反省してる。いいのに別に。
「もう帰ってたらどうしようかと思って、ハラハラしながら来ました」
ププッ…笑っちゃ悪いけど、そう思うなら人助けも程々ですよ。
「あと十分待って来なかったら、帰るとこでした。ギリギリセーフでしたね」
嫌味でなく、さらっと言ってしまった。だってこの人、そんなのも気にしそうな感じだもん。
「待っててくれて助かりました。次から気をつけます」
(…はい、気をつけて)
思わずエラそうに言いたくなって、肝心な所気にしてなかった。今、この人、次って言った⁈
(次…あるのかな…。だったらやっぱり聞いとかないと…)
「次は…待ちませんよ」
「えっ⁉︎ 」
「だから遅れても大丈夫なように、ケータイのナンバー教えといて下さい。そしたら安心して待てるので」
いいですか⁈…って問いかけにホッとしてる。なんかこの人、可愛いかも…。
ナンバーとメルアド交換し合って小野山さん、気を取り直したご様子。
「じゃあ入りますか」
なんだか楽しそう。
「お好きなんですか?テーマパーク」
あっ…パスポート代出してくれてる。しかもさり気ない。
「ここはアトラクションよりも面白い場所があるんで好きなんです」
はい…とパスポート手渡してくれる。ぺこりと一礼。受け取りながら聞いてみた。
「アトラクションより面白い所って、どこですか?」
そんなに面白い所あったっけ?なにせ私、ここに来たの二十年ぶりくらいだもんな…。
「入ったら分かりますよ」
嬉しそうに笑うなぁ。小野山さんて、もしかしてテーマパーク通⁈
(……な訳ないか)
ゲートくぐると、キャラクターの着ぐるみ達がお出迎え。
わー昔と変わらないんだぁ…って、当たり前か。
取り敢えず、手振られたから振り返す。いつ来ても、童心に帰るよね、こういう所って。
「どこから行きます?」
地図広げながら小野山さんて聞く。そりゃーやっぱり…
「アトラクションよりも面白い所!」
しかないよね。
「じゃあこっちです」
入場ゲートから真っ直ぐ直進。地図なんか見もしないで歩いてく。
(こりゃ相当通ってるな…)
恋人でも何でもないから手も繋がないけど、とりあえず小野山さん、私の歩調に合わせてくれてるみたい。優しいな。
それでもって、とある建物の前でストップ。
「これです」
指差す看板の文字、目で追った。
「アイス・スケート・リンク…」
…て、つまりこれ…
「スケート場ですか⁈ 」
大きな声出す私に、小野山さんの冷静な答え。
「そうです」
そうです…って、そんな、当たり前のように言われてもさぁ…。
「私、滑れませんよ」
だって生まれてこの方、スケートなんてした事ないもん。
「大丈夫です。僕、滑れますから」
(いや、そりゃ、あなたはそうでしょーけどぉ)
…って、こっちの不安、まるで無視して中に入って行く。こっちこっち…て、いや、手を振られても…。
思わず尻込み。
(あっ、でもそっか。これも“お試し”なんだ)
経験ないこともやってみようって、決めたんだっけ。
意を決して、ホントにすごい勇気振り絞って、ついて行った。