ラン・エ リーズ
すると、
今までずっと黙っていた
無表情な男:リュンヌが動いた。
部屋を出ていったレイを
追い、走る。
「…レイ兄さん」
その声に
呼ばれたはずの彼は振り向かなかった。
背を向けたまま、
話を聞くつもりなのだ。
「…先日の雨で、
タンクの水はいっぱいですよね?」
「…あぁ。
それが、どうした。」
「いえ、
ならば僕は過ごし遅れてエストを出ます。」
「そうか」とレイ。
やはり、
一度も振り返ることはなかった。
本当に
冷たい男だ。
そして、
本当にリュンヌという男は不思議だ。
彼が考えていることなんて、
きっと
天才以上にならなければ
わからないのだろう。
そんな
兄弟なのだ。