ラン・エ リーズ
「…中へお入り下さい。」
勧める彼女を一人の兵士が
止めた。
だが、
彼女は「いいのです」 と真剣な顔で
訴えた。
「…マリアさんですよね?
いいんですか?」
マリアは振り返る。
控え目の桃色の紅を薄く塗った唇は
微笑んでいた。
「私は女王様の侍女。
ただそれだけです。
この城にいる限りそれ以外に
意味は持ち得ません。」
さらに口を開こうとするシュクルだが、
マリアはそれを止めた。
「…では、こちらへ」