ラン・エ リーズ
―時は戻る―
「…遅くなりました。
今から警備にあたります。」
そう言うリュンヌを見下ろす兄が
いた。
髪に隠れた瞳から
どこか寂しげな色が伺える。
また
冷たい群青色の目を見せた。
「新兵が仕事に遅れるとは
どういうことだ。」
「…すみません。」
レイは弟に背を向け
側にいたゲビンを見た。
二人は目が合うと
頷いた。
「…リュンヌ、
お前ではこの国の兵として
役に立たない。
よって…
国から出てもらう。」
リュンヌがしたことは
彼もわかっている。
それを
有り難くも思っている。
こんな理由で
国から出ろと命令するのが
おかしいということもわかっている 。
全部全部
わかった上でこれなのだ。
弟に対して真っ直ぐ目を見て
伝えられないレイの様子がそれを思わせる。
優しすぎるレイ。
ゲビンはそれを知っているからこそ
レイの下、軍人としているのだ。