ラン・エ リーズ
この国では身分の低い者は
高い者に顔を中々見せることはない。
なぜなら、
ずっと頭を下げているからだ。
身分の高い者に許しを得るまで
顔を下げておくのが礼儀なのだ。
「あなた様に
御見せできる様な顔ではありません。」
下げた頭がまた一段と下がった。
レイとゲビンは
二人の会話を止めようとしてできなかった。
周りにいた者を含め、
皆、目を見張って二人をみた。
ミニオンヌは
いきなりしゃがんだかと思うと、
リュンヌの両頬を手で包み
無理矢理顔を上げさせた。
「…!?」
ミニオンヌの突然の行動にリュンヌだけでなく
皆も動揺を隠せなかった。
だが、
彼女はそんなことお構い無しだ。
真っ直ぐに
リュンヌを見つめた。
「まぁ、綺麗な黒い瞳。
キラキラしていて、黒真珠みたいだわ。
肌も白いし、とても綺麗な人だったのね?
…あら?」
ミニオンヌはリュンヌの身体を
観察して首を傾げた。
リュンヌはその行動の意味に気付き、
静かに身体を強張らせた。