冷たい手
ダイチは家の中で、初めに彼女の服をハンガーにかけた。勝手に洗濯したら、後で何か言われるかもしれないと思ったからだ。

そして、替えの服を用意した。
ダイチの家には、女性物の服がある。それは、ダイチの彼女の服だった。正確には、元の彼女である。
ダイチには、その服がどうしても捨てられなかった。彼女の部屋を、全く片づける事が出来なかった。

服のサイズは合うだろうか。
いや、合いそうだ。そんな気がする。
ダイチは服を一着選んだ。
この服を、車の彼女に着せたら。彼女が着たら。
自分は、自分の彼女をまた思い出してしまうだろう。

部屋を出ようとしたダイチ。服だけでなく、他にも必要なものがあることに気がついた。

救急箱と、風邪薬。それから食べ物と飲み物。
食べ物を探していると、メロンパンを見つける。
水をペットボトルに詰め、コップを用意する。
メロンパンが嫌いだったらどうしよう。と、ダイチは真剣に悩む。
次にダイチは氷枕を用意した。そして、彼女が目をさましたときのために、メモを書いた。

毛布だけでは寒いだろうと、布団も持っていくことにした。
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