冷たい手
ダイチはキーボードを叩く。

『みかさん。ぼくのなまえはうえのだいちです。おどろかせてしまってすみません。』

また声の繋がったの声がする。ダイチは自分の打ち込んだ文字を、スピーカーから出しているたのだ。

「あの、失礼ですが、あなたはもしかして、声が出せないんですか?」

「………」

『でません。』
スピーカーから声は聞こえた。

ミカは理解した。ダイチは無口なのではなく、声が出ないのだと。

『じこしょうかいのつづきをしましょう。』

ダイチの繋がった声がする。
ミカはその声を聞きながら、ダイチに近づいた。

「そのまま書いてください。直接読みますから。」

「………」
ダイチはすこし困惑しながらも、ミカが座れるよう、パソコンの前を少しあけた。

ミカが座ると、ダイチは文字を打った。
「えっと…? 僕のうえは上下の上。のは野いちごの野。一般的な上野です。そして、大地は、大きいに地面のぢ。それで大地です。」

読みながらミカは気づく。そして、おかしくなった。

「ねえ、パソコンなんだからさ、漢字で出てるよ?」

「…!」

確かにその通りだった。ダイチもおかしくて笑う。しかし、そこに声はない。クスクスと笑うのだ。
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