Again
翌朝の葵は、気分良く起きることが出来た。自分の寝慣れたベッドでなるとやはり心地よい。
「お腹がすいた」
昨日作ったおかずが残っている。冷蔵庫から出して、レンジで温めれば、すぐに食事が出来た。
「ひもじかった時が終わってよかった」
朝もまた、食べれることに感謝をする。
腹も満たした葵は、手早く片づけをして、コーヒーを淹れる。ゆっくりと朝の情報番組を見て、ふとスマホに目をやる。あれからずっと電源を切ったままだ。手を伸ばして電源を入れると、メールを受信した。
それは仁からのものだった。
“無事に日本に着いているようで安心した。帰国したら話がある。すまなかった。“
仁からのメールも短いものだった。言いたいことは沢山あるだろう。メールでは語りつくせないくらいに決まっている。
「仁さん、あの光景は私には強烈すぎたわ。やっぱり計算高く結婚すると、手痛いしっぺ返しがあるのね」
マグカップを持ってコーヒーを飲みながら、窓際にあるロッキングチェアに移動する。パリの景色も時代を感じさせて良かったが、ここからみる都心の街並みもまた葵は好きだった。
「此処を出ることになるかもしれないなあ」
まだ決めていない先のことなのに、そんな言葉が口からついてでた。
休暇が終わり、出勤初日は、うって変わって怠かった。時差ぼけなどないが、仕事をしたくないという身体の拒否反応だろう。昼になるまで本調子にならず、コーヒーを何杯も飲んでいた。
「どうだった? パリ。いい進展はあった?」
昼休憩を食堂で久美と一緒に食事をしていた時、にやけ顔で久美が聞いてきた。出勤したら絶対に聞かれるだろうと朝から覚悟をしていた。
「パリはやっぱりすてきだった。仁さんは急に仕事が増えちゃって、夕食くらいしか一緒にできなかったけど、存分に満喫できたよ」
「そう……で、下着は活躍出来たわけ?」
久美はこれが一番聞きたかったことだ。にやけ顔で葵に顔を近づける。
「え? え、えっと……活躍? できたかなあ? どうかなあ?」
さすがに報告できる内容じゃない。葵は口を濁す。
「もう、いいなさいよ……ま、しつこく聞くほど悪趣味じゃないけどお?」
「お土産も奮発したし、頼まれものもちゃんと買って来たじゃない」
「そうなのよお、めちゃくちゃ嬉しかった、お金使わせちゃったわね」
先ほどのにやけ顔とは打って変わって、顔からは満面の笑みで夢見る少女のようなポーズをとる。
「有休の間、お世話になったんだから、久美にはこれくらい安い物よ」
「有難く受け取らせてもらうわ」
久美はそれからも、仁とのことについてしつこく聞いてくることはなかった。いつも深入りをせず、必要なときには声を掛け気遣う。
パリにいる間も、こうしているときも久美に打ち明けられたらどんないいいかと、何度考えたかしれない。
あと数日したら仁が帰国する。その時葵はどうするのかまだ決めていない。きっと、その時にでる行動が、今の素直な気持ちなのだろうとは思っている。
振り乱したりしないこと。それだけを心に留めている。
仕事はなんとかこなしてはいたが、だらけた生活を続け、鏡を見ると顎の下に吹き出物が沢山できていた。
「胃腸の調子が良くないのかな?……サプリでも飲むか」
毎日、料理をする気にはなれず、コンビニでお弁当ばかりを食べ、毎晩ビールを飲んだ。そんな生活に終止符を打たなくてはいけない。明日は仁が帰国する日だからだ。
スマホの電源は変わらず切っておく毎日で、家に帰ると、確認していた。仁が電話を掛けてくるのは分かっていた。葵は自分がどうするのかと現実を突きつけられていた。
「お腹がすいた」
昨日作ったおかずが残っている。冷蔵庫から出して、レンジで温めれば、すぐに食事が出来た。
「ひもじかった時が終わってよかった」
朝もまた、食べれることに感謝をする。
腹も満たした葵は、手早く片づけをして、コーヒーを淹れる。ゆっくりと朝の情報番組を見て、ふとスマホに目をやる。あれからずっと電源を切ったままだ。手を伸ばして電源を入れると、メールを受信した。
それは仁からのものだった。
“無事に日本に着いているようで安心した。帰国したら話がある。すまなかった。“
仁からのメールも短いものだった。言いたいことは沢山あるだろう。メールでは語りつくせないくらいに決まっている。
「仁さん、あの光景は私には強烈すぎたわ。やっぱり計算高く結婚すると、手痛いしっぺ返しがあるのね」
マグカップを持ってコーヒーを飲みながら、窓際にあるロッキングチェアに移動する。パリの景色も時代を感じさせて良かったが、ここからみる都心の街並みもまた葵は好きだった。
「此処を出ることになるかもしれないなあ」
まだ決めていない先のことなのに、そんな言葉が口からついてでた。
休暇が終わり、出勤初日は、うって変わって怠かった。時差ぼけなどないが、仕事をしたくないという身体の拒否反応だろう。昼になるまで本調子にならず、コーヒーを何杯も飲んでいた。
「どうだった? パリ。いい進展はあった?」
昼休憩を食堂で久美と一緒に食事をしていた時、にやけ顔で久美が聞いてきた。出勤したら絶対に聞かれるだろうと朝から覚悟をしていた。
「パリはやっぱりすてきだった。仁さんは急に仕事が増えちゃって、夕食くらいしか一緒にできなかったけど、存分に満喫できたよ」
「そう……で、下着は活躍出来たわけ?」
久美はこれが一番聞きたかったことだ。にやけ顔で葵に顔を近づける。
「え? え、えっと……活躍? できたかなあ? どうかなあ?」
さすがに報告できる内容じゃない。葵は口を濁す。
「もう、いいなさいよ……ま、しつこく聞くほど悪趣味じゃないけどお?」
「お土産も奮発したし、頼まれものもちゃんと買って来たじゃない」
「そうなのよお、めちゃくちゃ嬉しかった、お金使わせちゃったわね」
先ほどのにやけ顔とは打って変わって、顔からは満面の笑みで夢見る少女のようなポーズをとる。
「有休の間、お世話になったんだから、久美にはこれくらい安い物よ」
「有難く受け取らせてもらうわ」
久美はそれからも、仁とのことについてしつこく聞いてくることはなかった。いつも深入りをせず、必要なときには声を掛け気遣う。
パリにいる間も、こうしているときも久美に打ち明けられたらどんないいいかと、何度考えたかしれない。
あと数日したら仁が帰国する。その時葵はどうするのかまだ決めていない。きっと、その時にでる行動が、今の素直な気持ちなのだろうとは思っている。
振り乱したりしないこと。それだけを心に留めている。
仕事はなんとかこなしてはいたが、だらけた生活を続け、鏡を見ると顎の下に吹き出物が沢山できていた。
「胃腸の調子が良くないのかな?……サプリでも飲むか」
毎日、料理をする気にはなれず、コンビニでお弁当ばかりを食べ、毎晩ビールを飲んだ。そんな生活に終止符を打たなくてはいけない。明日は仁が帰国する日だからだ。
スマホの電源は変わらず切っておく毎日で、家に帰ると、確認していた。仁が電話を掛けてくるのは分かっていた。葵は自分がどうするのかと現実を突きつけられていた。