Again
クラブ・オアシス。夜の世界では知らない人はいないとされている老舗のクラブだ。現在のママは先代が引退して、2代目になる。客層はVIPのみ。マナーを心得ている、上流階級の社交場だ。なぜこのような高級クラブに葵のようなバイトが勤められるのか。
葵はホステスの求人で面接を受けたのではない。カウンターでつまみを作ったり、簡単な掃除、ナフキンを折ったり、洗濯をしたりといった雑用の仕事をする為だ。葵も、自分にホステスが勤まるわけがないと分かっている。
昼間は、ホテルの仕事をして、広報部の一員として頑張っている。人気のホテルとして、名前を連ねているプレシャスホテルは、広報に力を入れている。その為、企画会議が頻繁に行われ、プレゼンも多いのだ。残業も多くなる為に、夜のバイトを探していたのだ。
そこで、時給もいい、しかも賄い付きのクラブの求人を探していたのだ。そして、雑用ならば客の相手もしなくていいし、女の争いも巻き込まれない。ホステス以外の求人で見つけたクラブ・オアシスは、葵にとってまさにオアシスだった。
しかしひょんなことから、フロアにでることになってしまった。ホステスが集団でインフルエンザにかかり、人が足らなくなったのだ。
「葵ちゃん、悪いけど、今日だけフロアに出てくれる? 各テーブルを回って、お酒を作ったり、灰皿を替えたりしてくれるだけでいいの。話の相手はしなくていいから。私が、色々と合図を送るし、心配はないから」
和服の似合うママは、困り果て葵にお願いをしてきた。今日もゴージャスに髪をアップして、襟の抜き具合も色っぽく着物を着こなしている。一度も同じ着物を見たことがないが、一体何枚の着物を持っているのだろうと思っている。
「あ、はい。分かりました」
事情が事情なだけに、頑なに断る理由もない。日頃、融通を聞いてもらっている手前、困っている時はお互い様と、快く引き受けた。
「そのウエイターの制服じゃあ色気がないから、バックヤードにあるドレスを着るといいわ。 瑠璃ちゃん、ちょっと葵ちゃんの支度を手伝ってくれる?」
ホステスの瑠璃にママが声をかけ、瑠璃は、葵を呼んだ。
葵と瑠璃はバックヤードに入った。
「葵ちゃん、サイズわかる?」
「洋服は9号ですね」
「どうしよっかなあ?」
人差し指を顎に当て、首をひねる。
瑠璃はハンガーにぶら下がっているドレスを葵と交互に見ながら似合う物を探している。
「あんまり露出しないほうがいいんですけど」
瑠璃が葵にあてるドレスは肌の露出が多く、素人には恥ずかしすぎる。もじもじしながら答えた。
「そんなのあるわけがないじゃない、葵ちゃん」
「ま……、そうですよね」
「そ、うん! これにしよう」
満足げに選んだのはワンショルダーのドレスでシフォン生地の柔らかい雰囲気の物だった。
葵はホステスの求人で面接を受けたのではない。カウンターでつまみを作ったり、簡単な掃除、ナフキンを折ったり、洗濯をしたりといった雑用の仕事をする為だ。葵も、自分にホステスが勤まるわけがないと分かっている。
昼間は、ホテルの仕事をして、広報部の一員として頑張っている。人気のホテルとして、名前を連ねているプレシャスホテルは、広報に力を入れている。その為、企画会議が頻繁に行われ、プレゼンも多いのだ。残業も多くなる為に、夜のバイトを探していたのだ。
そこで、時給もいい、しかも賄い付きのクラブの求人を探していたのだ。そして、雑用ならば客の相手もしなくていいし、女の争いも巻き込まれない。ホステス以外の求人で見つけたクラブ・オアシスは、葵にとってまさにオアシスだった。
しかしひょんなことから、フロアにでることになってしまった。ホステスが集団でインフルエンザにかかり、人が足らなくなったのだ。
「葵ちゃん、悪いけど、今日だけフロアに出てくれる? 各テーブルを回って、お酒を作ったり、灰皿を替えたりしてくれるだけでいいの。話の相手はしなくていいから。私が、色々と合図を送るし、心配はないから」
和服の似合うママは、困り果て葵にお願いをしてきた。今日もゴージャスに髪をアップして、襟の抜き具合も色っぽく着物を着こなしている。一度も同じ着物を見たことがないが、一体何枚の着物を持っているのだろうと思っている。
「あ、はい。分かりました」
事情が事情なだけに、頑なに断る理由もない。日頃、融通を聞いてもらっている手前、困っている時はお互い様と、快く引き受けた。
「そのウエイターの制服じゃあ色気がないから、バックヤードにあるドレスを着るといいわ。 瑠璃ちゃん、ちょっと葵ちゃんの支度を手伝ってくれる?」
ホステスの瑠璃にママが声をかけ、瑠璃は、葵を呼んだ。
葵と瑠璃はバックヤードに入った。
「葵ちゃん、サイズわかる?」
「洋服は9号ですね」
「どうしよっかなあ?」
人差し指を顎に当て、首をひねる。
瑠璃はハンガーにぶら下がっているドレスを葵と交互に見ながら似合う物を探している。
「あんまり露出しないほうがいいんですけど」
瑠璃が葵にあてるドレスは肌の露出が多く、素人には恥ずかしすぎる。もじもじしながら答えた。
「そんなのあるわけがないじゃない、葵ちゃん」
「ま……、そうですよね」
「そ、うん! これにしよう」
満足げに選んだのはワンショルダーのドレスでシフォン生地の柔らかい雰囲気の物だった。