Again
仁と潤は、ホテルの外を散策しながら話をしていた。
沖縄の照りつける太陽がスーツを着ていた仁に容赦なく照りつけた。
「スーツになんてしなきゃよかったな」
ワイシャツの袖を腕まくりして、ネクタイを緩める。
「そう言う訳にも行かないだろう」
前日から緊張気味だった仁だが、沖縄の開放的な雰囲気に、自然と笑みがこぼれる。
「二日目の会議が終わったら役員でお疲れ様会だ。予定通り翌日は東京。 いいか、今週はこの会議のまとめが東京であり、社長にも報告しなくてはならない。一日だけだ。今週は一日だけオフをやる。一旦東京に帰ってから、また沖縄に行け」
「わかった」
自分の立場がこれほどまでに邪魔だと思ったことはなかった。時間に追われる毎日。沖縄の地に降り立つと、それがひしひしと伝わる。
「もうすぐ、葵ちゃんに会えるな」
「どうかな? 俺が来ることを当然知っている。顔を合せないようにしているに違いない」
「名指しで呼んでもらうか?」
「それだけは止めよう。迷惑がかかる。俺は自分で葵と会って話をする」
「そうか、分かった」
景色を眺めながら、仁は此処に葵が暮らしているのかと感慨深かった。ゆっくりとした時間のなかで、きっと傷を癒して行ったのだろう。その傷を作ったのは自分だ。沖縄の高く広い空を見て、葵の傷の深さを改めて思う。
あの日の葵が忘れられなかった。
いつも仁の前では緊張していた。それがほぐれ始め、笑顔が見られるようになった時、最悪のことをしてしまった。
愛する人を深く傷つけ、悲しみのどん底に落とすと、自分さえも立ち直れないことを知った。
ホテルについて、型通りの挨拶を受ける中でも、葵の姿を探した。
「開放的な気分になるな、海で泳ぎてぇなあ」
歩きながら海を見て、潤はすっかりリゾート気分だ。
「彼女が来たがってたなあ」
「休みに連れてこい」
潤の、のんびり加減が、少し仁の緊張をほぐす。
なんて声をかけよう。なんて話しかけよう。会議のことよりもそればかりが頭をよぎる。
「戻るか、会議の時間だ」
「少し早くないか?」
仁は、腕時計を見る。
「ホテルのスタッフが会議の準備をしてるはずだ。葵ちゃんがいるかもしれないだろう?」
「ああ、そうか」
どこか抜けている仁に潤はちょうどいい。潤の助言を受け、仁はそそくさと散策をおしまいにして、会議室へと向かう。
会議室の前は、準備をするスタッフが、忙しそうに動いていた。葵を探しているが、やはり姿はない。それは分かりきっていたことなのに、少し落ち込む自分が情けないと仁は思う。
会議の後は、休憩を取り、重役との歓談や打ち合わせと予定はびっしりである。夜は、ホテルで全員がそろう夕食だ。その後はプライベートな時間となるが、副社長として重役に挨拶がてら顔を出さない訳にはいかないだろう。
「気を散らすなよ」
潤が落ち着きのない仁に見かねて言ってきた。
「ああ、会議はスタッフの出入りもないだろうから、それは大丈夫だろう」
「お前、緊張してるのか?」
「正直、そうだ」
「お前がな……葵ちゃんは凄い影響力だな」
「そうだな」
肩を揉むような仕草で、潤は緊張を解した。
沖縄の照りつける太陽がスーツを着ていた仁に容赦なく照りつけた。
「スーツになんてしなきゃよかったな」
ワイシャツの袖を腕まくりして、ネクタイを緩める。
「そう言う訳にも行かないだろう」
前日から緊張気味だった仁だが、沖縄の開放的な雰囲気に、自然と笑みがこぼれる。
「二日目の会議が終わったら役員でお疲れ様会だ。予定通り翌日は東京。 いいか、今週はこの会議のまとめが東京であり、社長にも報告しなくてはならない。一日だけだ。今週は一日だけオフをやる。一旦東京に帰ってから、また沖縄に行け」
「わかった」
自分の立場がこれほどまでに邪魔だと思ったことはなかった。時間に追われる毎日。沖縄の地に降り立つと、それがひしひしと伝わる。
「もうすぐ、葵ちゃんに会えるな」
「どうかな? 俺が来ることを当然知っている。顔を合せないようにしているに違いない」
「名指しで呼んでもらうか?」
「それだけは止めよう。迷惑がかかる。俺は自分で葵と会って話をする」
「そうか、分かった」
景色を眺めながら、仁は此処に葵が暮らしているのかと感慨深かった。ゆっくりとした時間のなかで、きっと傷を癒して行ったのだろう。その傷を作ったのは自分だ。沖縄の高く広い空を見て、葵の傷の深さを改めて思う。
あの日の葵が忘れられなかった。
いつも仁の前では緊張していた。それがほぐれ始め、笑顔が見られるようになった時、最悪のことをしてしまった。
愛する人を深く傷つけ、悲しみのどん底に落とすと、自分さえも立ち直れないことを知った。
ホテルについて、型通りの挨拶を受ける中でも、葵の姿を探した。
「開放的な気分になるな、海で泳ぎてぇなあ」
歩きながら海を見て、潤はすっかりリゾート気分だ。
「彼女が来たがってたなあ」
「休みに連れてこい」
潤の、のんびり加減が、少し仁の緊張をほぐす。
なんて声をかけよう。なんて話しかけよう。会議のことよりもそればかりが頭をよぎる。
「戻るか、会議の時間だ」
「少し早くないか?」
仁は、腕時計を見る。
「ホテルのスタッフが会議の準備をしてるはずだ。葵ちゃんがいるかもしれないだろう?」
「ああ、そうか」
どこか抜けている仁に潤はちょうどいい。潤の助言を受け、仁はそそくさと散策をおしまいにして、会議室へと向かう。
会議室の前は、準備をするスタッフが、忙しそうに動いていた。葵を探しているが、やはり姿はない。それは分かりきっていたことなのに、少し落ち込む自分が情けないと仁は思う。
会議の後は、休憩を取り、重役との歓談や打ち合わせと予定はびっしりである。夜は、ホテルで全員がそろう夕食だ。その後はプライベートな時間となるが、副社長として重役に挨拶がてら顔を出さない訳にはいかないだろう。
「気を散らすなよ」
潤が落ち着きのない仁に見かねて言ってきた。
「ああ、会議はスタッフの出入りもないだろうから、それは大丈夫だろう」
「お前、緊張してるのか?」
「正直、そうだ」
「お前がな……葵ちゃんは凄い影響力だな」
「そうだな」
肩を揉むような仕草で、潤は緊張を解した。